アクロ体操
アクロ体操は、2人から4人が組になり、音楽に合わせて人を持ち上げる・投げる・受け止める技を見せる体操です。世界体操連盟(旧・国際体操連盟FIG)の正式な7種目の一つで、世界選手権は偶数年に開かれます。
このページでは、5つの種目と3つの演技、採点のしくみ、日本での歴史と団体、世界の勢力図、2027年の大会日程、始め方までをまとめました。
アクロ体操とは
アクロ体操(英語でアクロバティック・ジムナスティックス)は、体操競技のゆかと同じ12メートル四方のマットの上で演技します。2人、3人、4人のチームが、ダンスやバレエの動き、倒立、宙返りを組み合わせ、1つの作品を作ります。
チームの中には役割があります。下で支えたり、上の人を投げ上げたりする人を「ベース」と呼びます。上に乗ったり、投げられて宙を回ったりする人を「トップ」と呼びます。3人や4人の組では、ベースとトップの間に「ミドル」が入り、人の塔(ピラミッド)を作ります。体の大きさや得意なことがちがう人が組むことで、1人ではできない技が生まれます。
日本アクロ体操協会は、体操競技と新体操に次ぐ「第3の体操」としてこのスポーツを紹介してきました。運動会の組体操に近い動きが基本にあるので、日本の子どもにもなじみやすい種目です。
5つの種目(組み合わせ)
国際大会では、次の5つの組み合わせで競います。どの組も、同じ組み合わせの中で順位を決めます。
| 種目 | 人数 | 組み方 |
|---|---|---|
| 女子ペア | 2人 | 女性2人。ベース1人とトップ1人 |
| 男子ペア | 2人 | 男性2人。ベース1人とトップ1人 |
| ミックスペア | 2人 | 男性がベース、女性がトップ |
| 女子グループ | 3人 | 女性3人(トリオ)。ベース・ミドル・トップ |
| 男子グループ | 4人 | 男性4人(メンズフォー)。ベースと2人のミドル、トップ |
以前は男子と女子の「タンブリング」(マットの上で回転技を続ける種目)もありましたが、1999年の世界選手権を最後に外れました。
3つの演技と時間
アクロ体操には、ねらいのちがう3つの演技があります。ジュニアとシニアでは3つすべてを行い、年少の部では1つの簡単な演技だけを行います。
| 演技 | 中身 | 時間のめやす |
|---|---|---|
| バランス | 倒立や人の塔など、止まった形を決められた秒数だけ保つ。力・柔らかさ・安定が見どころ | 約2分40秒 |
| ダイナミック | ベースがトップを投げ上げ、宙返りやひねりのあとに受け止める。跳ぶ・回る・着く動きが中心 | 約2分 |
| コンバイン | バランスとダイナミックの両方の要素を入れる。決勝で行われることが多い | 約2分30秒 |
音楽は原則として歌詞のない曲を使いますが、3つの演技のうち1つでは歌詞入りの曲も使えます(日本アクロ体操協会の説明)。
採点のしくみ
得点は「難しさ(D)」「出来ばえ(E)」「芸術(A)」の3つを足し、ルール違反の減点を引いて決まります。シニアの難しさの点には上限がありません。出来ばえと芸術は10点から減らしていく方式で、出来ばえの点は2倍にして足します。つまり、ミスを少なくすることがいちばん大きな意味を持ちます。
- 難しさ(D):行う技にはそれぞれ点数が決まっています。チームは大会の前に、行う技を書いた表(タリフシート)を出します。
- 出来ばえ(E):倒立で腰が少し曲がると0.1、大きな乱れは0.5の減点です。トップが受け止められずに落ちると1点も減ります。
- 芸術(A):2人以上の動きのつながり、音楽との合い方、振り付けの工夫、マット全体の使い方などを見ます。
- そのほかの減点:決められた技が足りない、止まる時間が足りない、受け止めの失敗などで点が引かれます。
採点のルールは、ほかの体操と同じく4年ごとに見直されます。
年齢の区分
| 区分 | 年齢 | 内容 |
|---|---|---|
| プレユース | 11〜16歳 | 大陸や国の大会で行う入門の部。世界体操連盟の大会はない |
| ユース | 12〜18歳 | 演技の数や技に制限がある |
| ジュニア | 13〜19歳 | 3つの演技を行う。2024年からジュニア世界選手権がある |
| シニア | 15歳以上 | 世界選手権やワールドゲームズの部 |
選手は1つの大会で、1つの区分・1つの組にしか出られません。体操競技とちがい、20代や30代の女性、40歳をこえた男性が世界選手権に出ることもあり、長く続けられるのも特徴です。
歴史
- 1930年代:旧ソ連でスポーツとしてのアクロバットが始まる。1939年に男子の大会、翌年に女子の大会が開かれる。
- 1957年:旧ソ連・ポーランド・ブルガリア・東ドイツの4か国で、初めての国際大会。
- 1973年:国際スポーツアクロ体操連盟ができる。本部はブルガリア。
- 1974年:第1回世界選手権。1975年にはスイスで第1回ワールドカップ。
- 1993年:ワールドゲームズ(五輪にない競技の国際総合大会)の種目になる。
- 1998年:国際体操連盟(FIG)が引き継ぐ。2007年ごろから「アクロ体操(アクロバティック・ジムナスティックス)」の名前が使われる。
- 2026年10月:国際体操連盟が名前を「世界体操連盟(ワールドジムナスティックス)」に変えた。
日本の団体と歩み
日本でアクロ体操を広めているのは「日本アクロ体操協会」です。日本体操協会の公式サイトでも、アクロ体操の案内はこの協会のサイトにつながっています。日本体操協会の中にもアクロ体操委員会があり、催しの運営を受け持っています。
- 1985年(昭和60年)秋:日本体操協会が中国のミックスペアを招き、模範演技を行ったのが日本での始まり。
- 1986年11月:日本体操協会が国際スポーツアクロ体操連盟に加盟。
- 1991年:東京・国立代々木競技場第一体育館で第8回ワールドカップを開催。アジアでは中国に次いで2か国目の開催。
- 2023年1月29日:日本体操協会アクロ体操委員会が「スポーツフレンドシップフェアかわさき」(カルッツかわさき)を運営。倒立の速さや静止の長さを競う大会、トランポリンの体験会、アクロ体操のエキシビションを行った。
日本の主な成績
1991年のワールドカップ東京大会のパンフレットには、日本代表が前の年(1990年、ドイツ・アウクスブルク)の世界選手権で残した順位がのっています。
| 年・大会 | 種目 | 日本の選手と結果 |
|---|---|---|
| 1990年 世界選手権 | 男子タンブリング | 澤田憲一郎 8位、富田博憲 16位 |
| 1990年 世界選手権 | 女子タンブリング | 中村綾 12位、高梨奈美 13位 |
| 1990年 世界選手権 | 女子ペア | 川島初美・惣島ひとみ 11位 |
| 1990年 世界選手権 | ミックスペア | 鈴木幸恵・谷慎也 11位 |
| 1990年 ブルガリアマスターズ | 男子フォー | 岩谷真樹・迫洋一・廣田聡ら 2位 |
| 2020年 アクロバティック・ブロックス・コンペティション(オンライン) | 倒立の技術・速さ | 国別でテクニック部門1位、スピード部門2位。井本幸佳(14歳以下)がテクニック1位・スピード2位 |
近年の大きな国際大会では、2025年のワールドゲームズ(中国・成都、8月8〜10日)に14の国・地域から78人が出ましたが、日本からの出場はありませんでした。2026年の世界選手権(イタリア・ペーザロ)のシニアにも、日本の名前は出場国の一覧にありません。日本はまだ競技人口が少なく、まずは教室や体験会で選手を増やす段階にあります。
世界の勢力図(2025〜2026年)
2025年のワールドゲームズでは、5つの種目でウクライナ(金1・銀2)、イスラエル(金1・銅2)、ベルギー、中国、スペインが金メダルを取りました。中国は女子グループで優勝しています。
2026年9月24〜27日にイタリアのペーザロで開かれた第30回世界選手権には、シニアだけで30の国・地域から249人が出場しました。国別の団体はイスラエルが金、ロシアが銀、アメリカが銅でした。メダルの数はイスラエルが金5個を含む8個、ロシアが9個、アメリカが金3個を含む7個で、この3か国が中心です。北朝鮮やウズベキスタンもメダルを取り、アジアの国も力をつけています。
主な大会と2026〜27年の日程
アクロ体操の世界選手権は偶数年、ヨーロッパ選手権などの大陸選手権は奇数年が基本です。ワールドカップは毎年、ヨーロッパを中心に何か所かで開かれます。日付はすべて現地の日付です。
| 日程 | 大会 | 開催地 |
|---|---|---|
| 2026年9月17〜20日(終了) | 第2回ジュニア世界選手権・第14回世界ユース大会 | イタリア・ペーザロ |
| 2026年9月24〜27日(終了) | 第30回世界選手権 | イタリア・ペーザロ |
| 2027年2月11〜13日 | ワールドカップ | ベルギー・プールス=シント=アマンツ |
| 2027年3月24〜28日 | ヨーロッパ選手権(シニア・ジュニア) | イタリア・ペーザロ |
| 2027年5月14〜16日 | ワールドカップ | ポルトガル・マイア |
| 2027年5月27〜29日 | ワールドカップ | ドイツ・アーレン |
| 2027年6月4〜6日 | ワールドカップ | ブルガリア・ブルガス |
| 2027年6月11〜13日 | ワールドカップ | アゼルバイジャン・バクー |
| 2027年6月16〜27日 | ヨーロッパ競技大会(アクロ体操を含む) | トルコ・イスタンブール |
2026年のワールドカップは、3月にポルトガルのマイア、4月にベルギー、5月にブルガリアのブルガス、6月にアゼルバイジャンのバクーとポーランドのジェシュフで行われました。
始め方(教室・年齢)
日本アクロ体操協会は、各地で教室を開くほか、希望に合わせて指導員を派遣しています。協会のサイトでは、次のような教室が紹介されています。
- ACRON バクテン教室:協会の委員長・磯前方章さんが教えるアクロ体操の教室。
- 相模体操館:器械体操とアクロ体操の教室。1991年ワールドカップ日本代表の佐藤(旧姓・鈴木)幸恵さんも指導。
- 箕面スポーツクラブ:2歳半から中学生までの幼児・児童の体操教室。
- ホープ泉佐野体操クラブ:マット・跳び箱・鉄棒・トランポリン・アクロ体操など、基礎から宙返りまで。
- POWERBOMB流エンターテイメント道場:ダンスとアクロバットの教室。子ども向けのスポーツアクロ体操クラスもある。
協会によると、アクロ体操の基本は組体操ののぼり方・おり方で、小学生以上ならだれでも楽しめます。まずは倒立、ブリッジ、柔軟などの体操の基礎を身につけ、マットのある場所で指導者について練習します。人を支えるベースは力と安定、トップは柔らかさと空中での感覚が大切で、体格のちがう人どうしが組めるのもこのスポーツのよさです。
大会に出るには、日本アクロ体操協会の手続きが必要です。協会の「全日本種目別選手権大会」では、申込用紙・写真・演技の曲を事前に送る形をとっています(第4回大会の案内では参加費6,000円)。
この種目のこれからの大会
| 日程 | 大会 | 開催地 | 案内 |
|---|---|---|---|
| 2月11日(木)〜13日(土) | アクロ体操ワールドカップ プールス=シント=アマンツ大会 | プールス=シント=アマンツ(ベルギー) | 大会の案内 |
| 3月24日(水)〜28日(日) | アクロ体操ヨーロッパ選手権(シニア・ジュニア) | ペーザロ(イタリア) | 大会の案内 |
| 5月14日(金)〜16日(日) | アクロ体操ワールドカップ マイア大会 | マイア(ポルトガル) | 大会の案内 |
| 5月27日(木)〜29日(土) | アクロ体操ワールドカップ アーレン大会 | アーレン(ドイツ) | 大会の案内 |
| 6月4日(金)〜6日(日) | アクロ体操ワールドカップ ブルガス大会 | ブルガス(ブルガリア) | 大会の案内 |
| 6月11日(金)〜13日(日) | アクロ体操ワールドカップ バクー大会 | バクー(アゼルバイジャン) | 大会の案内 |
| 6月16日(水)〜27日(日) | ヨーロッパ競技大会(アクロ体操) 体操競技・新体操・トランポリン・アクロ体操・エアロビック・パルクールを行う総合大会。 |
イスタンブール(トルコ) | 大会の案内 |
この種目の最近の結果
| 日程 | 大会 | 結果 |
|---|---|---|
| 9月24日(木)〜27日(日) | 第30回アクロ体操世界選手権 | 国別団体はイスラエルが金、ロシアが銀、アメリカが銅。イスラエルが金メダル5個を取った。 |
よくある質問
アクロ体操と組体操はどうちがいますか。
組体操に近い人の塔の動きが基本ですが、アクロ体操は音楽に合わせた作品として演技し、難しさ・出来ばえ・芸術の3つで採点される競技です。宙に投げた人を受け止めるダイナミックな技もあります。
アクロ体操はオリンピックの種目ですか。
オリンピックの種目ではありません。ワールドゲームズ(1993年から)やヨーロッパ競技大会の種目で、世界選手権は偶数年に開かれます。
何歳から始められますか。
日本アクロ体操協会は、小学生以上ならだれでも楽しめるとしています。協会が紹介する教室には2歳半から通える体操教室もあります。国際大会の年齢区分は11歳からです。
日本で大会はありますか。
日本アクロ体操協会の全日本種目別選手権大会があります。2023年には日本体操協会アクロ体操委員会が川崎で倒立大会やエキシビションを行いました。
次の世界選手権はいつですか。
世界選手権は偶数年の開催で、直近は2026年9月にイタリアのペーザロで開かれました。2027年はヨーロッパ選手権(3月・ペーザロ)とワールドカップ5大会、ヨーロッパ競技大会(6月・イスタンブール)が予定されています。
出典
- 日本アクロ体操協会 アクロ体操について
- 日本アクロ体操協会 協会について
- 日本アクロ体操協会 レッスン情報
- 日本アクロ体操協会 Q&A集
- 日本アクロ体操協会 '91ワールドカップ東京
- 日本アクロ体操協会 お知らせ(スポーツフレンドシップフェアかわさき)
- 日本アクロ体操協会 各種手続き
- Wikipedia(英語) Acrobatic gymnastics
- Wikipedia(英語) Acrobatic gymnastics at the 2025 World Games
- Wikipedia(英語) 2026 Acrobatic Gymnastics World Championships
- World Gymnastics 大会カレンダー
- 日本体操協会 国際体操連盟の名称変更について
情報の確認日:2026-10-20。日程は開催地の日付です。変更があるため、出かける前・見る前に主催者の案内をご確認ください。