パルクール
パルクールは、壁・柵・鉄棒などの障害物を、走る・跳ぶ・登る・越える動きで進むスポーツです。競技は速さを競う「スピード」と、技の難しさと出来ばえを競う「フリースタイル」の2種目で、2017年から世界体操連盟(旧・国際体操連盟FIG)の正式な種目になりました。
日本は世界でも上位の国で、2025年のワールドゲームズ(中国・成都)では塩幡睦大が男子フリースタイルで金メダル、永井音寧が女子フリースタイルで銀メダルを取りました。ルール、日本の団体、成績、2026年の日本選手権の結果、これからの日程、始め方をまとめます。
パルクールとは
パルクールは、20世紀後半のフランスで生まれた体の動かし方の文化です。日本体操協会パルクール委員会によると、中心にいたのはダヴィッド・ベルとシャルル・ペリエールで、2人は「ヤマカシ」と名のるグループで都市の建物や障害物を駆け抜け、体と心をきたえました。ダヴィッド・ベルは、兵士から消防士になった父レイモンド・ベルから、障害物を乗り越える意味を教わったといいます。
パルクールは、パリ近くの町リスから世界へ広がりました。映画「TAXi 2」「ヤマカシ」「アルティメット」(原題バンリュー13)などで知られるようになり、日本でも2001年に「YAMAKASI」が公開されてメンバーが来日したことで名前が広まりました。当時の日本では「パルクール」よりも「ヤマカシ」と呼ばれることが多かったそうです。
パルクールを練習する人は「トレーサー」と呼ばれます。技を見せびらかすことより、自分をきたえることや、仲間と互いの安全を大切にすることが文化の中心にあります。
競技としての歩み
- 2016年:冬のユース五輪でシャルル・ペリエールが大きな体験会を行い、競技として注目される。
- 2017年:国際体操連盟にパルクール委員会ができ、ダヴィッド・ベルが初代委員長、シャルル・ペリエールが副委員長に。
- 2018年:広島の「FISE Hiroshima」で第1回ワールドカップ。年末にペリエールが委員長に就く。
- 2019年:広島のワールドカップで泉ひかりがスピード優勝、年間チャンピオンにもなる。
- 2022年:東京で第1回世界選手権。ワールドゲームズ(アメリカ・バーミングハム)で初めて実施。
- 2024年:北九州で第2回世界選手権と、初めてのジュニア世界選手権。
- 2025年:ワールドゲームズ(中国・成都)で2回目の実施。
2つの種目と採点
| 種目 | 競い方 | コースや採点 |
|---|---|---|
| スピード | スタートからゴールまで、障害物を越えながらタイムを競う | 国際大会のコースは全長約40メートル。2.5メートル以上の障害物もある。床や壁は硬い素材、鉄棒は金属。安全のためにチェックエリアがある |
| フリースタイル | 決められた場所で、技を組み合わせて演技する | 演技は20秒以上45秒以内。出来ばえのEスコア(最大15点)と、難しさのDスコア(上限なし)の合計。国際大会は6人の審判 |
- Eスコア:危険のない技選び、着地の安定、動きのなめらかさ、動く範囲の広さ、障害物の使い方のうまさを見ます。
- Dスコア:演技の中でいちばん難しい技3つを評価し、組み合わせ、行った場所、変化のつけ方で加点します。
- 選手は靴をはいて演技します。ジュニアでは安全のため、技の高さや回転の数に制限があります。
スピードはミスなく駆け抜ける安定感、フリースタイルは宙返りやひねりの難しさと、地面・壁・鉄棒の使い方の工夫が見どころです。
日本の団体
日本体操協会の公式サイトでパルクールを開くと、日本体操協会パルクール委員会(ジャパン・パルクール・コミッション)のサイトにつながります。委員会は2018年4月1日に発足し、初代委員長の島田善さんのあと、2023年から荒本英世さんが委員長を務めています。日本選手権の運営、日本代表の派遣、審判と指導者の講習会、ジュニア育成の「ネクストジェン」を行っています。
委員会は、世界体操連盟・アジア体操連盟・ワールドゲームズの主催大会と、日本体操協会の主催大会を公式大会とし、ほかの団体や地方、民間の大会は公式大会に入らないとしています。
このほか、2014年に発足した一般社団法人日本パルクール協会(JPA)もあります。こちらは「パルクールは独立したスポーツ」という立場で、文化の普及や、新しく始める人の入り口づくりを目指しています。日本選手権を主催しているのは日本体操協会です。
| 主催 | 大会 | 開催の間隔 |
|---|---|---|
| 世界体操連盟 | 世界選手権 | 2年ごと(2022年・2024年) |
| 世界体操連盟 | ワールドカップ | 毎年数か所(2018年から) |
| 世界体操連盟 | ジュニア世界選手権 | 2年ごと(2024年から) |
| アジア体操連盟 | アジア選手権・ジュニアアジア選手権 | 2025年から |
| 国際ワールドゲームズ協会 | ワールドゲームズ | 4年ごと(2022年・2025年) |
| 日本体操協会 | パルクール日本選手権 | 毎年(2019年から)。2024年から予選と決勝の2段階 |
| 日本体操協会 | ネクストジェン選考会 | 毎年(2023年から) |
日本の主な成績
| 年・大会 | 日本の結果 |
|---|---|
| 2019年 ワールドカップ(広島) | 泉ひかりがスピードで優勝し、この年の年間チャンピオン |
| 2020年 オンライン世界大会 | 島田善が優勝 |
| 2022年 世界選手権(東京) | 山本華歩が女子フリースタイルで銀メダル |
| 2022年 ワールドゲームズ(アメリカ・バーミングハム) | 泉ひかりが銅メダル |
| 2024年 世界選手権(北九州、11月15〜17日) | 塩幡睦大が男子フリースタイルで銀メダル。同時開催のジュニア世界選手権で日本はメダル5個 |
| 2025年 ワールドゲームズ(中国・成都、8月12〜13日) | 塩幡睦大が男子フリースタイルで金、永井音寧が女子フリースタイルで銀。日本は金1・銀1で国別メダル数の1位 |
| 2026年 ワールドカップ(フランス・モンペリエ、5月14〜17日) | 大貫海斗が男子フリースタイルで銀(30.2点)、永井音寧が女子フリースタイルで銀(22.9点)。石田英太は男子フリースタイル6位 |
| 2026年 ワールドカップ(トルコ・イスタンブール、6月4〜7日) | 男子フリースタイルで大貫海斗が4位、鈴木智也が5位。女子フリースタイルで永井音寧が7位(予選は3位) |
2024年の北九州大会では、天候のためにシニアの決勝の一部が行われず、準決勝や予選の順位でメダルが決まりました。2025年のワールドゲームズには18の国・地域から24人(男女12人ずつ)が出場し、日本からは2人が出ました。
2026年 第7回パルクール日本選手権
予選は4月17〜19日に広島市の「ひろしまゲートパーク」で、アーバンスポーツの祭典「URBAN FUTURES HIROSHIMA 2026」の中で行われました(入場無料)。決勝は9月5・6日に山口県宇部市のCOCOLANDで行われ、次の選手が優勝しました。
| 部門 | 1位 | 2位 | 3位 |
|---|---|---|---|
| 男子フリースタイル | 大貫海斗 29.2点 | 石田英太 27.7点 | 鈴木智也 26.2点 |
| 男子スピード | 吉川知実 14.378秒 | 石田英太 15.517秒 | 勝乗志音 15.678秒 |
| 女子フリースタイル | 岸上はづき 22.3点 | 亀井彩桜 19.1点 | 松原夕來 16.5点 |
| 女子スピード | 今福心椛 28.719秒 | 入江珠紀 29.134秒 | 富田陽音 29.896秒 |
同じ大会でジュニア世代の「ネクストジェン選考会」も行われ、10歳以下・13歳以下・ジュニアの部で競いました。ジュニア男子では小前春多がスピード1位(16.807秒)、成田結乃助がフリースタイル1位(24.5点)でした。
これからの主な大会と日程
| 日程(現地) | 大会 | 開催地 |
|---|---|---|
| 2026年10月28日〜11月1日 | ワールドカップ | 中国・北京 |
| 2027年6月16〜27日 | ヨーロッパ競技大会(パルクールを含む) | トルコ・イスタンブール |
国内では毎年、春に日本選手権の予選、秋に決勝が開かれています。2027年の日程は、日本体操協会パルクール委員会のサイトで発表されます。世界選手権は2022年と2024年に日本で開かれた2年ごとの大会です。
始め方(教室・年齢)
- 体験会や教室に参加する:パルクール委員会のイベント一覧には「体験会」の分類があり、各地でも教室が開かれています。たとえば2025年5月には、サッカーのモンテディオ山形が小学生向けの「モンテディオパルクール教室」を山形県総合運動公園で開き、日本パルクール協会会長の佐藤惇さんが指導しました。
- 指導者を確かめる:パルクール委員会は世界体操連盟と協力して、コーチ資格の講習・試験や審判の資格講習を行っています。教室を選ぶときは、指導者がどの団体の資格を持っているかを見ると安心です。
- 子どもの育成:ネクストジェンは10歳以下から参加でき、選考を通った選手は強化合宿などで技術を学びます。
- 公式大会に出る:日本選手権の予選に出るには、日本体操協会への選手登録と大会申込が必要です。
練習は、低い段差を安全に降りる、着地で衝撃をやわらげる、手をついて柵を越える、といった基本から始めます。人の家や店の敷地、立ち入り禁止の場所では練習せず、専用の施設や使ってよいと許可された場所で、仲間と安全を確かめ合いながら行いましょう。
この種目のこれからの大会
| 日程 | 大会 | 開催地 | 案内 |
|---|---|---|---|
| 10月28日(水)〜11月1日(日) | パルクール ワールドカップ 北京大会 2026年のワールドカップでは大貫海斗と永井音寧がモンペリエ大会で銀メダル。 |
北京(中国) | 大会の案内 |
| 6月16日(水)〜27日(日) | ヨーロッパ競技大会(パルクール) スピードとフリースタイルを実施。 |
イスタンブール(トルコ) | 大会の案内 |
この種目の最近の結果
| 日程 | 大会 | 結果 |
|---|---|---|
| 9月5日(土)〜6日(日) | 第7回パルクール日本選手権 決勝 | 男子はフリースタイル大貫海斗(29.2点)、スピード吉川知実(14.378秒)、女子はフリースタイル岸上はづき(22.3点)、スピード今福心椛(28.719秒)が優勝。 |
| 6月4日(木)〜7日(日) | パルクール ワールドカップ イスタンブール大会 | 男子フリースタイルで大貫海斗が4位、鈴木智也が5位。女子フリースタイルで永井音寧が7位(予選3位)。日本の3人全員が決勝へ進んだ。 |
| 5月14日(木)〜17日(日) | パルクール ワールドカップ モンペリエ大会 | 男子フリースタイルで大貫海斗(30.2点)、女子フリースタイルで永井音寧(22.9点)がともに銀メダル。石田英太は男子フリースタイル6位。 |
よくある質問
パルクールはオリンピックの種目ですか。
2026年10月時点でオリンピックの種目ではありません。世界体操連盟の正式種目で、世界選手権、ワールドカップ、ワールドゲームズなどが開かれています。
スピードとフリースタイルのちがいは何ですか。
スピードは約40メートルの障害物コースのタイムを競います。フリースタイルは20〜45秒の演技で、出来ばえ(最大15点)と難しさ(上限なし)の合計点を競います。
日本の強い選手はだれですか。
2025年ワールドゲームズ金メダルの塩幡睦大、同銀メダルで2026年ワールドカップ銀の永井音寧、2026年ワールドカップ銀で日本選手権優勝の大貫海斗などがいます。
子どもでも競技に出られますか。
日本体操協会のネクストジェンには10歳以下・13歳以下・ジュニアの部があり、2026年の決勝でも各部で順位を競いました。ジュニアは安全のため技に制限があります。
日本パルクール協会と日本体操協会パルクール委員会はどうちがいますか。
日本体操協会パルクール委員会は世界体操連盟につながる競技団体で、日本選手権や日本代表を受け持ちます。日本パルクール協会は2014年発足の一般社団法人で、パルクールを独立した文化・スポーツとして広める活動をしています。
出典
- 日本体操協会パルクール委員会 パルクールとは
- 日本体操協会パルクール委員会 ABOUT US(組織・大会一覧・沿革)
- 日本体操協会パルクール委員会 RULES
- 日本体操協会パルクール委員会 EDUCATION
- 第7回パルクール日本選手権 決勝・NEXT GEN選考会 結果
- FIGパルクール・ワールドカップ・モンペリエ 日本代表選手結果
- パルクール・ワールドカップ2026 イスタンブール 日本代表選手結果
- 第7回パルクール日本選手権予選 URBAN FUTURES HIROSHIMA 2026にて開催
- 日本体操協会 第7回パルクール日本選手権決勝 大会情報
- Wikipedia(英語) Parkour at the 2025 World Games
- Wikipedia(英語) 2024 FIG Parkour World Championships
- World Gymnastics 大会カレンダー
- 立命館大学 紀要論文(日本パルクール協会の立場の紹介)
- リセマム モンテディオパルクール教室 開催のお知らせ(2025年)
情報の確認日:2026-10-20。日程は開催地の日付です。変更があるため、出かける前・見る前に主催者の案内をご確認ください。